松たか子さん主演『1ST KISS ファーストキス』を観て感じたこと

私の鑑定では、東洋占術をもとに、その方の持っている性質や運気の流れ、時間、環境、人との関係などを、さまざまな角度から見てお話ししています。ご相談の内容やその方の状況に合わせて、お話を丁寧に伺いながら、今より少しでも良い方向へ進めるように、必要なことをお伝えしたり、アドバイスさせていただいています。

でも、アドバイスしたとしても、それを受け取る心の状態が整っていなかったり、気持ちがいっぱいいっぱいになっていたりすると、なかなか現実を変えていくのは難しいこともあります。結局のところ、いちばん大切なのは、自分の気持ちを少しずつ整理しながら、考え方や行動を柔軟に見直していくことなのかもしれません。

そんなことを改めて感じたのが、前にAmazon Prime Videoで観た『1ST KISS ファーストキス』という映画でした。主演は松たか子さんです。この映画を観たとき、ただ感動したというだけではなく、人生のことや、お客様との向き合い方について、本当にいろいろ考えさせられました。

物語は、結婚15年目を迎えた夫婦の冷え切った関係から始まります。主人公のカンナと夫の駈は、長い間すれ違い、家の中でも別々に過ごすようになっていました。食事も寝る場所も別々で、離婚を前提に暮らしている、いわゆる仮面夫婦のような状態です。

そんなある日、カンナは仕事に向かう夫に離婚届を託します。ところがその日の夜、駈は駅のホームで線路に転落した親子を助けようとして、命を落としてしまいます。カンナにとって、夫を失った悲しみと同じくらい大きかったのが、どうして家族よりも、目の前の親子を助けることを選んだの?という、簡単には整理できない思いだったのではないかと思います。

夫婦関係はすでに冷え切っていて、離婚届を出すほど気持ちはすれ違っていました。けれど、突然その人を失ったことで、自分の中にまだ大きな思いが残っていたことに気づいたのかもしれません。離婚を考えていたからといって、15年以上一緒に過ごしてきた時間や、その人の存在の大きさまで消えてしまうわけではないのかもしれません。

目の前で困っている人を助けようとした彼の行動が立派だったことは、頭ではわかっていても、「あなたには私がいたのに、家族のことを思ったらそんなふうに飛び込めなかったんじゃないの?」という気持ちが、彼女の中にずっと残っていたのだと思います。日々のすれ違いの中で、お互いの大切さが見えにくくなっていただけだったのかもしれません。後悔と戸惑いを抱える中、カンナはひょんなことから過去へ戻ることになります。今の中年の姿のまま、自分と出会う前の若い頃の駈に会いに行くのです。

彼女は、15年後に彼が亡くなる運命を変えたい一心で、正体を隠したまま何度も過去へ戻り、彼に働きかけます。そうして関わるうちに、彼の優しさや不器用な愛情、そして自分がどれほど彼のことを好きだったのかを、少しずつ思い出していきます。けれど、どれだけ頑張っても、彼が亡くなるという事実そのものを変えることはできませんでした。そしてついに、自分が15年後の未来から来た妻であること、そして彼がいつか電車のホームで命を落とすことを、彼に知られてしまいます。

そのときカンナは、「どうして、私たち家族よりも、目の前の人を助けることを選ぶの?」「私のことは大切じゃないの?」という思いをぶつけます。その問いに対して駈は、カンナのことを大切に思っていないわけではないことを伝えます。そのうえで、たとえ自分がその選択によって命を落とすことになるとわかっていたとしても、目の前で線路に転落した親子がいたら、自分はやはり助けに向かうと思う…そんなニュアンスのことを話していました。

その言葉に触れて、カンナは駈のまっすぐな優しさや、人としての強さを改めて感じたのではないかと思います。そしてカンナは、なりふり構わずこう伝えます。「お願いだから、死なないで」この場面は、印象的でした。

その必死な思いを受け取った駈は、自分に残された時間を知ったうえで、それでもカンナを愛し抜くことを選びます。カンナが元の時間に戻ると、そこには以前とはまったく違う15年間がありました。すれ違い続ける夫婦ではなく、最後までお互いを大切に思い合い、愛情を伝えながら過ごす、幸せな15年間です。カンナ自身には、過去へ戻った記憶はありません。でも、駈だけは知っていました。若い頃に出会った未来の妻が、何度も自分のもとへ来て、必死に思いを伝えてくれたことを。その記憶を胸に、彼は限られた時間を、カンナを大切にする時間へと変えていったのです。

そして物語の最後には、彼を亡くし一人で過ごす中、亡くなる前に駈が残した手紙を見つけることになります。そこには、愛と感謝の言葉、そしてカンナが未来から何度も会いに来てくれていたことが綴られていました。カンナの一生懸命な思いが、二人の幸せな15年という時間をつくったのです。

この映画を観ながら、お客様と向き合う中で感じていること、自分自身のことと重なるものがあると感じました。鑑定に来られる理由は、本当に人それぞれです。

「仕事はどうですか?」
「良い方向に進めますか?」
「この苦しみから少しでも早く楽になりたい」
「金運を良くしたい」
「どうすればうまくいきますか?」

ご相談は人それぞれですが、悩みが深くなると、人はどうしても視野が狭くなってしまいます。相手を責めてしまったり、自分を責めすぎて動けなくなってしまったり、気づかないうちに苦しい方向へ進んでしまうこともあります。

現実の世界では、映画のように過去へ戻って人生を書き換えることはできません。でも、自分の考え方や行動を見直して、その都度少しずつ軌道修正していくことはできます。誰かと話すことで、自分では気づけなかった考え方の癖や、今の状況を客観的に見られるようになります。気持ちが整理され、相手との関係や置かれている環境を、少し冷静に見つめ直せるようになります。そして、「考え方を変えてみる」「行動を変えてみる」「環境を変えてみる」。そんな修正を重ねていくことで、人生の流れは少しずつ変わっていくのだと思います。

私は鑑定をしていて、「このままでは良くないな」と感じることがあります。でも、だからといって、「その考え方は間違っています」「このままではダメです」と強く伝えてしまうと、かえって心を閉ざしてしまうこともあります。悩みを抱えているときは、誰でも心に余裕がありません。だからこそ、その方の気持ちや置かれている状況を丁寧に見ながら、少しずつ考え方に柔軟性が持てるようになったり、気持ちや状況を整理できるようになったりすることが大切だと思っています。

すぐに大きく変わる必要はありません。ほんの少し視点が変わるだけで、こういう考え方もあるんだ、こんな行動をしてみようかなと、新しい選択肢が見えてくることがあります。そうやって少しずつ修正していくことで、人生の流れは確実に変わっていくのだと思います。私は、お客様に何かを押しつけたいわけではありません。その方のペースを大切にしながら、気持ちに寄り添い、一緒に考え、少しずつ良い方向へ進んでいくための伴走者でありたいと思っています。

映画の中では、「彼が亡くなる」という事実そのものは変わりませんでした。けれど、その日までの15年間は、まったく違うものになりました。すれ違いと後悔に満ちた時間ではなく、お互いを大切に思いながら過ごす、幸せな時間へと変わったのです。

人生には、すぐには変えられないことや、自分の力だけではどうにもできないこともあります。でも、そこに至るまでの時間をどう過ごすか、どんな考え方を選び、どんな行動を積み重ねていくかによって、人生は少しずつ変わっていくのだと思います。今の自分より、ほんの少しでも変われるように、結末だけを気にするのではなく、その途中の時間をどう過ごすかではないでしょうか。それが、人生を大きく変えていくのかもしれないと、この映画を観て改めて感じました。

HESUN ヘスン