
私が生まれ育ったところでは、みかんと言えば冬にこたつで食べる「温州(うんしゅう)みかん」が定番でした。我が家のこたつにも、いつも当たり前のように温州みかんが置いてあったのを覚えています。
そんな感じだったので、松山に来てから「えっ、みかんってこんなに種類があるの!?」と驚きました。しかも食べてみると、それぞれに個性やこだわりがあって本当に美味しいんですよね。
今となっては、これからやってくるみかんの季節が楽しみで仕方がありません。
そもそも、どうしてみかんってこんなにたくさんの種類があるんだろう?と気になって、私なりに色々と調べてみました。すると、研究機関(農研機構など)の遺伝子解析(DNA解析)で証明されている科学的なデータから、知られざるみかんの血統やルーツが見えてきて、すごく面白くて興味がわきました。
今回は、私なりに調べて知った「みかんの世界」をご紹介しますね。
1. 一目でわかる!ミカンの家系図
調べてみて一番びっくりしたのが、今のみかんたちには、ちゃんとした「家系図」があるということでした。
この家系図を見ると、どれとどれを掛け合わせたのかだけではなく、実はこれ、自然の中で偶然生まれたみかんだったんだ、といったルーツまで分かります。
そして、その家系図をたどっていくと、中心には必ず「清見(きよみ)」という、多くのブランド柑橘を生み出した“お母さん”が存在します。
1972年に誕生した清見は、日本の「温州ミカン」とアメリカの「トロビタオレンジ」を掛け合わせて作られたそうなのですが、種ができにくく、相手の良いところを引き出して濃厚な味にするという性質を持っているそうです。
この優れた性質があったからこそ、今私たちがお店で目にする人気のブランド柑橘たちの多くが、実はこの「清見」を母として生まれた子どもたちだったのです。
🍊 ミカンの系統図(交配のルーツと味わい)
※日本全国の主要柑橘および愛媛ブランド品種の血統ルートです
【1. 古代の原種と温州みかんの誕生】
九年母(くねんぼ) × 紀州ミカン(きしゅうみかん)
↓(1600年代初期・鹿児島県で自然交配して誕生)
【温州ミカン(うんしゅうみかん)】[甘みと酸味のバランスが良い定番の味]
【2. 現代ブランドみかんの母「清見(きよみ)」】
温州ミカン(うんしゅうみかん) × トロビタオレンジ
↓(1972年・研究機関にて人工交配)
【清見(きよみ)】[ジューシーで爽やかな甘み]
【3. 「清見」から生まれた品種たち】
↓(この交配で誕生)
不知火(しらぬい / デコポン)[強い甘みとまろやかな酸味]
はるみ[プチプチした食感と優しい甘み]
春峰(しゅんぽう)[爽やかな香りとさっぱりした甘み]
↓(交配して「アンコール」が誕生)
アンコール[濃密な甘みと強い香り]
│ └─► さらにポンカンを掛け合わせ ─► 甘平(かんぺい)[驚異的な甘さとシャキッとした食感]
└─ × マーコットを掛け合わせ ─► せとか[濃厚な甘みとあふれる果汁]
【南香(なんこう)】 × 【天草(あまくさ)】
↓(交配して誕生)
愛媛果試28号(えひめかし28ごう / 紅まどんな)[ゼリーのような食感と強い甘み]
↓(交配して「津之香」が誕生)
津之香(つのか)[バランスの取れた爽やかな味わい]
↓(交配して「カラ」が誕生)
カラ[濃厚な甘みと豊かな風味]
↓(交配して誕生)
はるか[見た目は黄色く上品な甘さ]
ひめのつき[ジューシーで程よい甘酸っぱさ]
↓(交配して誕生)
ブラッドオレンジ(タロッコ・モロ)[コクのある甘酸っぱさと芳醇な香り]
↓(交配して誕生)
サマー清見(さまーきよみ)[初夏にぴったりのさわやかな甘酸っぱさ]
【4. 自然の恵みで生まれた品種(偶然・自然交配)】
伊予柑(いよかん)[芳醇な香りとジューシーな甘酸っぱさ]
河内晩柑(かわちばんかん)[苦みがなく後味さっぱり]
八朔(はっさく)[ほろ苦さとしっかりした甘酸っぱさ]
ネーブルオレンジ[華やかな香りと濃い甘み]
日向夏(ひゅうがなつ)[爽やかな香りと控えめな甘さ]
黄金柑(おうごんかん)[小粒だが爽快な香りと濃い甘酸っぱさ]
文旦(ぶんたん / 水晶文旦[すいしょうぶんたん])[プリッとした果肉と品のある甘み]
サンフルーツ[さっぱりした酸味と甘み]
甘夏(あまなつ)[夏みかんから変化・さわやかな酸味]
この系統図を見ていると、血のつながった大きな家族みたいに見えてきます。
松山に来てから、本当に色んなみかんに出会いましたけれど、みんなこのルーツがあってこそ今私の手元にあるんだなぁと思うと、なんだか感動してきます。
ルーツを知ってから食べるみかんは、なんだかいつもより特別な味がします。
2. 季節で味わう!ミカンの主要品種一覧

🍊 季節で味わう!ミカン主要品種の味覚・食感・食べ方ガイド
| 品種名 | 味覚の特徴 | 食感の特徴 | 皮のむきやすさ | 旬の時期 |
|---|---|---|---|---|
| 温州みかん | 甘みと酸味のバランスが良い定番の味 | 房の薄皮(じょうのう)がとても柔らかく口に残らない | 手でむける | 10月〜1月 |
| 水晶文旦 | 上品で清涼感のある甘みと爽やかな香り | 果肉の粒が大きくプリッとした噛み応え | スマイルカット | 10月〜12月 |
| 愛媛果試28号 (紅まどんな) |
しっかりした甘みと優しい酸味 | ゼリーのようにぷるんとなめらか | スマイルカット | 11月下旬〜12月 |
| ひめのつき | 甘みと酸味のバランスが良く爽やか | 果汁が豊富ですっきりした食感 | 手でむける | 12月〜1月 |
| 西之香 | オレンジ特有の香りと深い甘み | ジューシーで果肉がぎっしり詰まっている | スマイルカット | 12月〜1月 |
| 甘平 | 酸味が少なくなじみやすい強い甘み | 外皮が極薄で粒がシャキシャキしている | 手でむける | 1月下旬〜2月 |
| はるみ | 爽やかな甘さで酸味が控えめ | 果肉の粒がプチプチと弾ける | 手でむける | 1月下旬〜2月 |
| 伊予柑 | むいた瞬間に広がる香りと豊かな甘酸っぱさ | 果肉が大きく水分がたっぷり | 手でむける | 1月〜3月 |
| まりひめ | 酸味がマイルドで優しい甘さ | 果肉がふんわり柔らかく、果汁がじわっと広がる | 手でむける | 1月〜2月 |
| デコポン | コクのある甘みとまろやかな酸味 | 果汁が多く薄皮ごと食べられる | 手でむける | 2月〜4月 |
| せとか | 濃厚な甘みと柑橘らしい強い香り | 皮がとても薄くとろけるような滑らかさ | スマイルカット | 2月〜3月 |
| 春峰 | 爽やかな風味で後味がさっぱり | 程よい歯ごたえがあり水分も十分 | 手でむける | 2月〜3月 |
| アンコール | 濃厚で深みのある甘みと独特の強い芳香 | 果肉が柔らかくジュースのように果汁が多い | 手でむける | 2月〜3月 |
| 津之香 | さわやかな酸味とすっきりした甘さ | 柔らかくみずみずしい食感 | 手でむける | 2月〜3月 |
| はるか | 黄色い見た目だが酸味がなく上品な甘さ | プルッとした質感でさっぱりしている | スマイルカット | 2月〜3月 |
| ネーブルオレンジ | 華やかな香りと濃い甘み | 果肉が詰まっていて非常にジューシー | スマイルカット | 2月〜3月 |
| 八朔 | 独特のほろ苦さとすっきりした酸味 | サクサクとした歯ごたえで水分は控えめ | 手でむける (皮むき器推奨) |
2月〜4月 |
| 文旦 (土佐文旦など) |
品のある甘みと爽やかな風味 | 果肉の粒がしっかりしていて食べ応えがある | スマイルカット | 2月〜4月 |
| 清見 | オレンジの香りとみかんのみずみずしさ | あふれ出るほど果汁が豊富で、まるで天然のジュース | スマイルカット | 3月〜4月 |
| ブラッドオレンジ (タロッコ/モロ) |
コクのある甘酸っぱさと独特の芳醇な香り | なめらかな果肉で非常にジューシー | スマイルカット | 3月〜4月 |
| 日向夏 | 白皮のほんのりした甘みと果肉の爽やかな酸味 | ふかふかの白皮と一緒に味わう独特の食感 | リンゴむき | 3月〜5月 |
| 黄金柑 | 小粒ながら爽快な香りとしっかりした甘酸っぱさ | プチッとした果肉で水分たっぷり | 手でむける | 3月〜4月 |
| サンフルーツ | 昔ながらのさっぱりとした甘酸っぱさ | 果肉がやや固めで歯ごたえがある | スマイルカット | 3月〜5月 |
| 甘夏 | すっきりした酸味とほんのり微かなほろ苦さ | 果肉がしっかりしていてプチプチ感がある | 手でむける (皮むき器推奨) |
3月〜5月 |
| 愛媛果試48号 (紅プリンセス) |
濃密な甘みと芳醇な香り | ゼリーのような滑らかさとツブツブ食感の融合 | スマイルカット | 3月下旬〜4月 |
| 河内晩柑 | 苦みがなく後味さっぱりの清涼感 | みずみずしくプルッとした果肉で後味さっぱり | 手でむける | 4月〜8月 |
| カラ | 熟度が高く濃厚でコクのある甘み | 果汁が多くしっかりした食べ応え | 手でむける | 4月〜5月 |
| 南津海 | 初夏に味わえる濃い甘みと適度な酸味 | ジューシーで粒立ちが良い | 手でむける | 4月下旬〜5月 |
| サマー清見 | 初夏向けの爽やかな甘酸っぱさ | みずみずしくプルッとした果肉で後味さっぱり | スマイルカット | 5月〜6月 |
※スマイルカットってどんな切り方?
表の「皮のむきやすさ」に出てきたスマイルカットですが、実際どう切るの?と思われるかもしれません。
切り方のコツは、最初に「横半分」にカットすることです。
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ヘタとおしりが上下に分かれるように、横半分に切る(ヘタが横を向く状態)
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切り口を下にして、スイカやケーキのように放射状に4〜8等分に切る
横から包丁を入れることで薄皮がカットされ、皮を気にせず果肉を直接味わえます。切った皮のカーブが、ニッコリ笑ったお口(スマイル)に見えることから、そのように呼ばれているそうです。
「紅まどんな」や「せとか」のように、外の皮が薄くてジュースが溢れるタイプの柑橘は、手でむこうとすると実が潰れて手がベタベタになりがちです。
スマイルカットにすると、果汁を閉じ込めたままゼリーのようなプルプル食感を贅沢に味わえます。手でむきにくい品種を買ったときは、ぜひ試してみてくださいね!
3. 交配のルーツを知ると、みかん選びがもっと楽しくなる
今回は、温州みかんや清見から広がる柑橘の血統(系統図)と、秋から初夏にかけて出回る主要品種の味わい・食べ方をご紹介しました。
今私たちが手軽に買ったり美味しく味わったりしているみかんの一粒一粒には、実は研究者さんたちの情熱や、自然の奇跡によって紡がれた素晴らしい血統のストーリーが詰まっています。
お店や産直でみかんを見かけたときは、ぜひ「みかんの系統図」を思い出してみてくださいね。
次回の記事(第2部)では、今私たちが当たり前のように食べているみかんの、ちょっと意外でドラマチックなお話をご紹介します!
知られざるストーリーを知ると、いつものみかんがもっと愛おしく、美味しく感じられるはずです。ぜひ次回の更新も楽しみに待っていてくださいね!
HESUN ヘスン
