「お母さんみたいな鼻がいい!」
毎日鏡に向かう末っ子は、自分の顔と睨めっこ。こんなことを言われたら何て答えていいのか、言葉に詰まってしまいます。
「どうしたら、私の鼻は左右対象に見えるんかな…」
「鼻(翼)が横に広がってて大きく見えるから、余計に形が悪いの目立つんだよ…」
毎日毎日、自分の足りないところを壊れたCDプレイヤーのように繰り返し浴びせかけてる。
中学生になってから、ずーっとひつこいくらいこんな感じだったけど、高校生になった我が子を今はやっと余裕を持って見守れるようになりました。
口唇顎裂のような形態異常があると、鼻だけではなく、人中や上唇の輪郭、歯茎にも割れ目ができて、成長に沿って手術していきます。本当に長い期間をかけての治療です。
家系としては認識の範囲にはなりますが、夫も私の方にも口唇裂が誰もいないので遺伝ではないですが、私が妊娠中にお腹の中でイレギュラーが起こったのかもしれません。
確かに体調も悪かったので検査や入院もしましたし、精神的にもかなり不安定だったけど、口唇裂を身ごもったことは予想外でした。
娘が口唇裂であることは産婦人科の先生から言われていたし、実は妊娠中はいまいちピンときていなかったので、あまり深刻に受け止めていなかったのが正直なところです。
早く出てきたかったのか、末っ子はお腹の下へグッーと下がってくる感覚がよくありました。出産時も分娩台に間に合わないくらいの勢いで生まれてきました。手の平に乗るくらいの小さくて元気な子でした。
出てきた娘は口唇顎裂だったので、鼻下から上唇にかけてパックリ割れていましたが、私は末っ子と対面して本当に可愛いくて愛おしくてたまらなかったことを今でも鮮明に憶えています。
けど口唇裂を持った子供は合併症や内臓疾患を抱えて生まれてくることもあります。末っ子はその点に関して何も問題なかったのでとても安心しました。
幼い頃は本人もそれほど自分の障害について悩んだりしませんでしたし、周りを気にすることなく手術や治療にも対応できていました。成長するにつれ、周りのみんなとの違いや治療の辛さに、「なんでみんなと違うの?」「こんな痛い思いをするの?」と、心の葛藤が始まります。生まれつきとわかっていても、修正手術をしても、矯正治療(特殊な治療)しても、顔の傷跡や凸凹はそんな簡単にはきれいにスムーズにはなりません。
・どれくらいの期間がかかるんだろう…
・どこまで修正手術をすればいいんだろう…
・どのくらいお金をかければ満足いくのでしょう…
私は母として、女性として、娘を常に受け止め真剣に向き合うようにしています。私自身、末っ子の気持ちをわかってたつもりでいました。だから中学生のときは本当に気持ちがすれ違い、お互いを傷つけていたと思います。それは私側の視点からしか、末っ子を見ていなかったからです。私もイライラしていたし、どうしいいかわからなかった。子供の気持ちというより、私の思った子になって欲しいという保身からだと思います。
障害はなった人にしかわからない世界があります。そして個人個人で性格もあるし、環境によっても捉え方が変わってきます。だからといって、末っ子が自分に都合のよい色眼鏡をかけて生きて欲しくはありません。
「焦らないで欲しい」
「もっと自分を信じて欲しい」
「もっと今を楽しんで欲しい」
言葉にするのは簡単だけど、10代の思春期の女の子には受け入れ難いのかもしれません。
今は話をとことん聞いて、一旦できる範囲で行動してみます。違っていたり、見直した方がいいときは方向転換です。そうやって一緒にどうしていくかを考えるようにしています。
まだまだ時間はかかりますが、末っ子の衝動的な考えや安易な妄想を一旦分散させる役割で行こうと思ってます。
生まれてきてくれてありがとう。大好きです。
HESUN ヘスン